PSE Japan 2025

理念

プロセスシステム工学国際会議(PSE)は、第1回が1982年に京都で開催されて以来、2024年に至るまで15回開催されてきました。そのアジア版であるPSE Asiaは2024年までに11回開催されています。今般、国内の「PSE研究に携わる学生や産学の研究者・技術者が一堂に会し、分野の活性化につなげるためのシンポジウム」として、PSE Japanを企画し、その第1回として PSE Japan 2025 を開催します。

日時・場所・プログラム

日時・場所

日時:2025年5月9日(金)13:00 ~ 10日(土)12:00
場所:東京大学伊藤国際ホール

プログラム

2025年5月9日(金)

時刻 内容 概要
13:00~13:10 開会挨拶
13:10~13:50 講演1:
山下善之(東京農工大)
13:50~14:20 講演2:
杉山弘和、Sara Badr、林勇佑
(東京大学)

タイトル:
リアルからモデル、モデルからリアルへ
東京大学 杉山・Badr研(https://pse.t.u-tokyo.ac.jp/
では、PSEの新ドメインとしての「医薬」を対象と
するモデリング研究に取り組んできた。医薬はもと
もと、PSEが無くても成り立ってきた分野であり、
その現実にインパクトをもたらすためには「リアル
からモデル、モデルからリアル」のサイクルを回す
必要がある。本講演では、低分子フロー合成や抗体
医薬品・幹細胞製造、システム医薬に関する最新の
研究成果を紹介しつつ、医薬のような新ドメインに
おけるPSEの役割について考える。さらに、研究室
として新たに着手した水素社会・エネルギーシステ
ムの研究や、スタートアップへの展開など、新しい
動向についても紹介する。
14:20~14:50 講演3:
加納学、加藤祥太、佐藤堪太
(京都大学、第一三共)

タイトル:
京都発、モデリング研究とその未来
京都大学ヒューマンシステム論分野では、プロセス
システム工学と医工学の両分野において、モデリン
グ技術を核とした研究を展開している。
加納は今でこそ情報学専攻に所属しているが、元々
は化学工学の出身である。およそ30年にわたり、
今で言う製造DXの実現を掲げて、主にデジタルツ
イン構築技術の開発に注力してきた。ドメイン知識
とデータの統合活用が重要だと信じて疑わない。
佐藤は、製薬企業での実務経験を経て社会人博士課
程に進学し、製剤プロセスのモデリング研究に取り
組んでいる。その過程で感じてきた、社会人が博士
課程に進学する意義に触れつつ、企業の視点とアカ
デミアの視点の交差点から見える課題と可能性を語る。
加藤も化学工学の出身である。モデル構築を楽にし
たいという思いから博士後期課程へ進学し、自然言
語処理を活用した物理モデル自動構築の研究を開始
した。異分野との接点で見えてきた面白さや試行錯
誤の中で少しずつ成果が出てきた現在、そしてその
先に見据える未来について語る。
14:50~15:10 休憩
15:10~15:40 講演4:
武田和宏(静岡大学)

タイトル:
有機化学分野とPSEのコラボレーション
有機化学の分野では、デジタル技術の取り込みが他
分野よりも遅れていた時期があったが、「デジタル
有機合成」Digi-TOSと称する科研費学術変革領域研
究グループでは精力的にデジタル技術が活用されて
いる。講演者が当グループにおいて得られた成果を
紹介するとともに、異分野の研究者との共同研究の進
め方について紹介することでPSE研究を進める学生へ
の一助となれば幸いである。
15:40~16:10 講演5:
川尻喜章、鈴木健介
(名古屋大学、東京大学)

タイトル:
製品品質の安定化に向けた
ベイズ推定による不確実性の定量評価
モデルベースのプロセス設計や運転最適化において
は、モデルパラメータや運転条件に起因する不確実
性が製品品質に大きく影響する。これらの不確実性
を定量的に評価し、設計・運転に反映することは、
製品品質の安定化やスケールアップ時のリスク低減
といった産業的課題の解決に直結する。本講演では、
連続クロマトグラフィープロセスを対象に、ベイズ
推定と物理モデルを統合した不確実性定量化手法を
提案する。提案手法では、実験データに基づいてモ
デルパラメータなどの事後分布を推定し、その不確
実性が製品品質である純度や回収率に与える影響を
評価することで、ロバストなプロセス構成や運転条
件の選定が可能となる。また、クロマトグラフィー
プロセスに関する既存の最適化手法と組み合わせる
ことで、不確実性を低減するための運転条件設計に
も応用できることを示す。連続クロマトグラフィー
の具体例を通じて、製造現場での意思決定を支援す
る不確実性定量化の有効性を紹介する。
16:10~16:40 パネル討議
16:40~17:00 休憩、移動、ポスター準備
17:00~18:00 ポスター(学生)
18:00~19:00 ポスター(学生)& 立食

2025年5月10日(土)

時刻 内容 概要
9:00~9:30 講演6:
金子弘昌(明治大学)

タイトル:
プロセスシステム工学の未来を見据えた
データサイエンス・AI活用の展開と展望
当研究室 https://datachemeng.com/ では、様々
な高機能性材料のデータを解析・機械学習してモデ
ル化し、そのモデルに基づいて未知の化学構造・材
料・製品を設計している。各種装置やプラントにお
いて高品質な製品を安定的に製造するための、測定
が困難なプロセス変数の値をプロセスデータから予
測して管理・制御する技術も開発している。プロセ
スシステム工学の考え方に基づき、分子設計や材料
設計にとどまらずプロセス設計や装置設計との整合
性を考慮しながら、最適なものづくりを実現できる。
データサイエンスやAI技術の発展により、実験や運
転から得られた多様なデータからモデルを構築し、
予測に用いるだけでなく、モデルを逆方向に解析す
ることで目標の特性を達成する設計条件を導出する、
真の意味でのモデルの逆解析が可能になった。本講
演では、分子・材料・プロセスの設計およびプロセ
ス管理・制御へのデータ駆動型アプローチの応用例
を交えながら、プロセスシステム工学におけるAI活
用の実践とその意義を議論する。また産業界におけ
る展開事例、今後の課題や人材育成のあり方につい
ても言及し、プロセスシステム工学の今後の展開と
将来展望について考察する。
9:30~10:00 講演7:
久下本秀和(住友化学)

タイトル:
プロセス産業の一エンジニアから
若きPSE技術者へのエール
2017年を基準として、2030年には生産年齢人口は
(15~64歳)767万人減少し、製造業の人材不足
はより顕著になると言われています。化学産業をは
じめとするプロセス産業は、社会課題の解決に最も
貢献し得る可能性を秘めながら、業界イメージ(人
気)は今一つなのかも知れません。”研究されつくさ
れた分野で新たなネタなんてない”なんてことはあり
ません。学の力を借りながら、さまざまな技術開発
に取り組んできた一端を紹介したいと思います。
今後はカーボンニュートラルに向けてプロセスの形
態も大きく変わることが予想され、課題解決におい
てプロセスシステム工学的センスがより求められる
ことになるでしょう。PSEを選んで下さった若き技
術者の皆さんへの感謝と、今後の活躍を期待し、定
年間近の一エンジニアからエールを送ります。
10:00~10:20 パネル討議
10:20~11:20 ポスター(企業)
11:20~11:40 全体討議
11:40~11:50 ポスター賞発表
11:50~12:00 閉会挨拶

ポスター発表についてのご案内

詳しくはこちらのページでご確認ください。
https://www.psec.jp/pse-japan-2025-poster/